診療・各部門
2023年4月から、兵庫医科大学脊椎外科班より常勤医師が派遣となりました。以前は非常勤医師が脊椎疾患の外来・手術を行っておりましたが、常勤となったことにより、より安全・迅速な対応(強い疼痛や麻痺等への介入)が可能となっております。当科では日本専門医機構認定脊椎脊髄外科専門医・日本脊椎脊髄病学会指導医による外来での脊椎疾患の診察、内服調整や神経根ブロック等の保存的加療から手術までの診療体制を整えております。近年に重視されている最小侵襲手術である腰椎前方手術や、高齢者の腰椎圧迫骨折(椎体骨折)に対する早期低侵襲セメント手術(経皮的椎体形成術-BKP-)も行っております。
代表的な疾患・手術
腰椎椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは脱出したヘルニアによって神経が炎症を起こして下肢に痛みが生じるのが特徴で自然経過において縮小または消退することがあります。保存的治療には鎮痛剤やブロック治療などがあり、痛みで日常生活の制限が高度な場合や下肢の筋力低下を伴う場合は手術を考慮します。手術は顕微鏡を用いたヘルニア摘出術を行っており1週間前後の入院期間です。また、椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア®)も行っており、一泊二日程度で治療が可能となっております。
腰部脊柱管狭窄症
しばらく歩くと下肢に痛みやしびれが出ることにより休憩したくなる症状(間欠性跛行)が特徴です。保存的治療は神経の血流を良くする内服薬、ブロック治療、理学療法等があり効果が乏しい場合は手術を考慮します。
従来は椎弓切除を行っていましたが、より低侵襲で後方支持組織を温存した術式として棘突起縦割式椎弓切除術を中心に行っています。
MIS-TLIF(最小侵襲腰椎固定術)
腰部脊柱管狭窄症にすべり症や側彎を合併している場合は固定術を併用します。経皮的にスクリューを入れることによって術後の疼痛や筋肉のダメージを最小限にして術後の相通軽減や早期社会復帰を目指します。入院期間は2~3週間の予定で3か月は硬性コルセットをして頂きます。
腰椎前方固定術
近年、腰椎疾患に対して低侵襲手術の応用が進んでおり、お腹の横から小切開で椎体の間にケージを挿入することが可能となりました。この技術により、背中の筋肉の温存や術後疼痛の軽減ができるようになり、大きなケージを設置することが可能となるため術後の安定性(骨癒合)の上昇が見込まれます。通常は経皮的後方固定術と併用することが多いです。MIS-TLIFとともに、最小侵襲腰椎固定術と言われております。入院期間は2~3週間の予定で3か月は硬性コルセットをして頂きます。
骨粗鬆症性椎体骨折
我が国の骨粗鬆症の患者数は約1、300万人といわれており、軽微な転倒や長時間の前屈みでの作業、あるいは何もしていないのに骨粗鬆症性椎体骨折を来すことがあります。治療の基本はコルセットによる外固定と正しい骨粗鬆症の治療が必要です。それでも偽関節となり背部痛が遷延する場合は低侵襲経皮的バルーン椎体形成術という方法があります。隣接椎体骨折のリスクを増加させるために適応は慎重であるべきですが、 同時に偽関節の予後不良因子も明らかにされつつあり、早期の介入によって早期のADL改善が期待されます。傷は5mm程度となります(場合により異なります)。
頚椎症性脊髄症
脊髄症(加齢による脊椎の変性)の結果、脊髄を圧迫し横断性の脊髄症を生じると、手指の細かい動作(ボタン動作がしにくい、箸が持ちにくい、字が書きにくい)が困難となったり、手足がしびれたり、歩行障害(歩行がぎこちない、脚がでにくい、脚がもつれる、階段で手すりが必要となるなど)が出ることもあり、重症化すれば排尿障害を来たすこともあります。手術は一般的な椎弓形成術を行い入院期間は2-3週間程度です。
2024年1月-6月 手術実績
術式 | 件数 |
---|---|
経皮的椎体形成術(BKP) | 23 |
腰椎椎体間固定術 | 15 |
腰椎前後方固定術(椎体置換を含む) | 15 |
頚部脊柱管拡大術 | 3 |
頚椎後方除圧固定術 | 4 |
腰椎後方除圧術 | 6 |
顕微鏡下ヘルニア摘出術 | 8 |
経皮的椎体形成術(BKP)+後方固定 | 3 |
胸椎後方除圧固定 | 4 |
後頭頚椎固定術 | 1 |
その他(生検等) | 5 |
合計 | 87 |
担当医
吉江 範親
経歴
- 日本整形外科学会専門医
- 日本専門医機構認定脊椎脊髄外科専門医
- 日本脊椎脊髄病学会指導医
- 兵庫医科大学整形外科脊椎班所属
- 兵庫医科大学救命救急センター
- 兵庫医科大学整形外科
- カルフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)短期留学
- 我汝会えにわ病院国内留学