病院長挨拶

当院の高齢者皮膚腫瘍センターについて

あけましておめでとうございます。おかげさまで当院も新築移転後5回目の新年を迎えることができました。昨年末からインフルエンザとCOVID-19の流行が始まっており、年末年始の間にこれらの感染症で病院がパンクするのではないかと危惧しましたが乗り越える事ができました。受診・入院をお受けできない場合もあったかと思いますがお許し下さい。

さて今回は当院の皮膚科の先生方が経験した症例が最上位の雑誌、British Journal Dermatologyに3報掲載されているのでご紹介したいと思います。

病院長 辻 晋吾
  1. 最初の報告ですが「メルケル細胞がん」の方です。国立がん研究センターでも「希少がん」として紹介されている極めて稀ながんになります。
    メルケル細胞がん | 希少がんセンター (ncc.go.jp)
    当院に来院された患者様の場合、腫瘍は下顎にあり切除手術で治療しました。その後再発をみました。一般的には再発時には抗がん剤などを併用し治療することが多い病気だそうですが、患者様が90代後半であったため強い抗がん剤は使わず「イミキモド」というお薬で治療をしたところ綺麗になおったとのこと。超高齢者の生活の質を落とさない治療として期待できると思います。
  2. 角層下膿疱症:報告者の名をとって「Sneddon-Wilkinson病」とも呼ばれる、皮下に膿が溜まる稀で治りにくい病気です。皮疹が体幹と四肢に拡がり5年間治らなかった様ですが、エキシマランプという紫外線で治療が成功しました。
  3. 不定細胞組織球症:組織球という白血球の一種が増殖する原因不明の難病です。顔に赤い平坦な隆起が出来て20年間治らないという男性が当院を受診されました。ステロイドや紫外線照射は無効でしたが、デルゴシチニブという大阪発の新薬を使うことで治療が成功しました。

皮膚は紫外線などの刺激に晒される事が多く、刺激が蓄積した高齢者にがんができやすい様に思います。悪性黒色腫のように取扱いを誤ると命取りになる病気もあれば、(1) でお示しした様な仮に再発しても年齢を考慮した体に対する負担を抑えた治療が適切な場合もあります。当院の「高齢者皮膚腫瘍センター」では部長の三浦先生を始め皮膚腫瘍に造詣の深い医師が来院された患者様の診療を行っております。

なお、このように稀な疾患が同じ施設からトップジャーナルに掲載されることは大学病院であってもあまりない事のようで、今回、皮膚科部長の三浦先生は大阪大学の皮膚科学教室から論文賞を授与されました。

ご高齢の方に限りませんが、ご自身の皮膚に普通でない隆起を見つけたり、ご家族から指摘された場合は、是非当院の皮膚科を受診して頂ければと思います。

JCHO大阪みなと中央病院 院長  辻 晋吾