医師の方へ:難病申請について医師がすべき3つのこと

病気は高血圧や脂質異常症、高尿酸血症のように患者が多い病気ばかりではありません。発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない、かつ、希少な疾患であり、長期の療養を必要とするものを難病と言います。消化器疾患ならクローン病、遺伝性膵炎など、循環器疾患では特発性拡張型心筋症など、血液疾患では再生不良性貧血やサルコイドーシス、免疫性(特発性)血小板減少症など、腎疾患ではIgA腎症や急性進行性糸球体腎炎など、免疫疾患では悪性関節リウマチなどが代表的な難病です。特に国は350近い疾患を特定疾患(指定難病)としており、治療方法の確立を促進するため難病患者データの収集を行うことに加え、効果的な治療法が確立されるまでのあいだ、長期療養による医療費の負担を助成しています。

実際の医療費助成の方法ですが、例えば医療保険や介護保険適用後の自己負担割合が3割の現役世代であれば自己負担割合は2割に軽減されます。また自己負担額についても上限額がありその上限額を超えた額は助成されます。症状が軽くて治療をしていない場合には経済的メリットは少ないですが、手術や高額な治療薬を長期にわたり必要とする患者にとっては助けとなります。医師は患者に代わって申請できる訳ではありませんが、その代わり3つの点で患者の申請を援助することが可能です。

  1. 医師は患者の病気が指定難病であることを本人家族に伝え専門医に紹介できる。
    患者さんが指定難病である場合は、指定難病で長期にわたり療養する可能性があること、病名、国から医療費助成が受けられる可能性があることをお伝えする必要があります。病名はご本人が精神的ショックで忘れることもあるので、必ずメモ書きしてお渡しします。難病指定医であれば医療費助成に必要な診断書(臨床調査個人票)は作成できます。ただし臨床調査個人票で要求される自覚症状の程度や臨床所見、検査項目はかなり詳細かつ専門性が高いので、少なくとも最初は該当する疾患を熟知した専門医に紹介する方が安全でしょう。
  2. 医師は指定難病の申請の仕方をお伝えできる。
    この医療費助成は患者本人(または家族などの代理)が地方自治体の保健所か役所の難病窓口を通して申請するものです。申請に必要な書類として、1)特定医療費(指定難病)支給認定申請書;2)世帯全体の住民票;3)世帯の所得を証明する市町村民税課税証明書など;4)健康保険証の写しまたは「資格情報のお知らせ」か、マイナンバーカードで得られる「マイナポータル」画面;5)臨床調査個人票、の5つがあります。申請の前段階として上の書類のうち1)から4)までが必要になりますので、まずは役所に相談するのが迅速に事を進める手段です。
  3. 医師は診断書(臨床調査個人票)を作成できる(難病指定医に限る)。
    役所によっては②で患者さんが相談に来た時に「医師に診断書を貰ってきてください」と指示する場合がありますが、この診断書とは「臨床調査個人票」の事です。専門医として患者さんの申請に寄与できる最大の部分がここです。ただし記入する項目が山の様にあり、検査項目が専門的で病理診断結果など事前準備が必要なものが少なくありません。正直言って面倒くさいです。また指定難病の中には直腸炎型の潰瘍性大腸炎のように患者数が増えた結果、医療費助成対象とは認められなくなった病態もあります。ご自身の専門領域でなければ、専門医のいる病院にお任せする方が安全だと思います。

以上が特定疾患(指定難病)に罹ってしまった患者さんの医療費助成を援助するために医師ができる事になります。医師の善意でご本人に指定難病であることをお伝えし申請すれば経済的メリットがあることをお伝えしても、患者さんによっては自分が「難病」に罹ったことを周囲に知られたくないと難病申請をしない決断をされる場合もありますが、参考になれば幸いです。

なお、難病指定医になるには勤務地の都道府県もしくは指定都市に申請する必要があります。詳細は該当する自治体にご確認ください。